海外FX業者が導入しているゼロカットシステムとは、突発的かつ大きな相場変動が発生した時に口座残高がマイナスになったとしても、損失額を業者が全額負担してくれるシステムです。
このゼロカットシステムは、国内FXには導入されていない海外FX独自のシステムであり、万が一の金融ショックに備えて顧客の資産を守る役割を担っています。
ただし、海外FXのゼロカットがあればどんな時でも絶対安心というわけではありません。
また、海外FXのゼロカットによる損失額を負担するための財源は、顧客が取引時に支払うスプレッドおよび取引手数料によって賄われているため、海外FXの取引コストは高いというデメリットがあります。
本記事では、海外FX業者が導入しているゼロカットの仕組みやゼロカットのデメリットについて詳しく解説します。
海外FXのゼロカットシステムとは?導入業者はおすすめできる?
海外FXのゼロカットとは、急激な相場変動が発生したことによって強制ロスカットが正常に機能せず、証拠金維持率が0%を下回ってしまった場合、マイナス残高となった損失額を海外FX業者が負担してくれるシステムです。
ゼロカットは海外FX業者が損失を負担する制度
経済指標発表時などのイベント発生時には突発的に大きなボラティリティが発生することも珍しくありません。
この時、証拠金維持率に余裕をもって取引していなければ、突発的な相場変動によって一時的に証拠金維持率が低下するリスクがあります。
もし、証拠金維持率がFX業者が定めたロスカット水準を下回れば、取引中のポジションが強制的に決済されます。
ただし、急激な相場変動が発生した場合、ロスカットが正常に機能せず、証拠金維持率がロスカット水準を大きく下回る、さらには証拠金維持率が0%を下回って口座残高がマイナスになるケースがあります。
ただし、ゼロカットを導入している海外FXでは、マイナス残高を海外FX業者が負担してくれるため、自動的に口座残高が0円に調整されます。
つまり、ゼロカットを導入している海外FXでは、顧客は入金額以上の損失を負うリスクがないため、安心して取引することができます。
ロスカットとの違い
ロスカットとは、各FX業者が定めた証拠金維持率になった場合、取引中のポジションが強制的に決済されるシステムです。ロスカット水準はFX業者によって異なりますが、海外FX業者ではロスカット水準を証拠金維持率20%に定めているところが多いです。
つまり、証拠金維持率が20%になれば強制的にロスカットが実行されるため、口座残高がマイナスになることはありません。
これに対し、ゼロカットとは、ロスカットが正常に機能せず証拠金維持率が0%を下回ってしまった場合に発生するマイナス残高を0円にすることにより、顧客が口座残高以上の損失を負うことを防ぐ制度です。
つまり、ゼロカットはロスカットが機能しない万が一の事態に備えた補完的役割を担っています。
ちなみに、国内FXではマイナス残高が発生した場合、追証(おいしょう)と呼ばれる追加保証金(委託保証金)の入金が請求されます。これは顧客がFX業者にマイナス残高分の借金をしている状態です。
追証は貸金業者からの借金と同等の扱いになるため、入金(返済)するまで支払い請求が続き、それに応じない場合は裁判に発展、さらに財産差押えが強制執行される可能性もあります。
もし、国内FXで多額の追証が発生した場合は、弁護士などの法律の専門家に相談したほうがいいでしょう。
もちろん、海外FXでは追証は発生しないので借金の心配はありません。
海外FXのロスカットに関してはこちらでも詳しく解説しています。
ロスカットとは、損失の拡大を防ぐためにFX業者が行う強制的なポジションの決済のことです。 国内FXでの取引に慣れた方の場合は、ロスカットと聞くと追証を連想されるかも[…]
海外FX業者が行うゼロカットの仕組み
海外FX業者がゼロカットによって顧客の損失を負担することができる理由と、海外FXでゼロカットが執行されるまでの流れについて解説します。
海外FX業者はなぜ損失を負担できるのか?
ゼロカットを導入している海外FX業者は、1取引ごとに顧客が負担する取引コストによって追証の負担をカバーする財源を確保しています。
例えば、海外FX業者として人気のあるXMでは、スタンダード口座、マイクロ口座、ゼロ口座の3種類の口座タイプを提供しており、それぞれの取引手数料、スプレッド、および注文方式には以下の違いがあります。
取引手数料 | スプレッド (ドル円 平均) | 注文方式 | |
---|---|---|---|
マイクロ 口座 | なし | 2.0pips | STP方式 |
スタンダード 口座 | なし | 2.0pips | STP方式 |
ゼロ口座 | 1ロット取引 往復10通貨 (10ドル) | 0.1pips | ECN方式 |
XMのゼロ口座のECN方式は、顧客が新規取引を行った際、XM側でカバー取引(他顧客の注文と相殺する取引)を行わずに直接インターバンクに流します。
そのため、ECN方式での取引には取引手数料が設定されています。
一方、STP方式を導入するXMのマイクロ口座とスタンダード口座では、カバー取引を行う際に、XMが得る利益を加味してスプレッドが設定されています。
つまり、STP方式では取引手数料は無料という仕組みにしているものの、スプレッドという形で顧客から手数料を回収していることになります。
従って、海外FXにおいて実際の取引で顧客が負担する正味の取引コストは「取引手数料+スプレッド」となります。
1ロット取引あたりの 取引コスト(ドル円) | |
---|---|
マイクロ 口座 | 20ドル |
スタンダード 口座 | 20ドル |
ゼロ 口座 | 11ドル |
このように、取引手数料が無料のSTP方式を導入している口座であっても、実際にはスプレッドという形で手数料を回収しています。これはXMに限らず、その他の海外FX業者も同じです。
一方、国内FXでは正味の取引コストは各業者が設定したスプレッドのみとなります。最近国内FXのドル円平均スプレッドは0.2pipsが国内FXのスタンダートとなっているため、XMのスプレッドと比較すると取引コストは10分の1となります。
つまり、海外FXでは国内FXの10倍もの取引コストが発生しています。
この取引コストの差が、ゼロカット時に発生する追証を負担できる海外FX業者の財源となっているのです。
関連:XMのゼロカットはいつ?されない原因・条件・デメリットまとめ
ゼロカットまでの流れ
ゼロカットシステムが導入されている海外FXでも日常的な為替変動においてゼロカットが執行されることはほとんどありません。その理由は、各海外FX業者はゼロカットが執行される前に、ロスカットを設定しているためです。
海外FXのゼロカットはあくまでもロスカットが正常に機能しないほど急激なボラティリティの相場が発生した時の補完的機能です。
もし、ロスカットが機能せずに証拠金維持率が0%を下回ってしまった場合、マイナス残高が発生します。
ただし、この時にすぐゼロカットが執行されるわけではありません。
もし、口座残高にクレジットとしてボーナスが残っている場合、ボーナスによってマイナス残高を補填します。
それでも口座残高がプラスにならない場合、残りのマイナス残高に対してゼロカットが執行され、口座残高は0円に調整される流れになります。
ゼロカット執行のタイミング
ゼロカットが執行されるタイミングは海外FX業者によって異なります。海外FXでマイナス残高が発生してもゼロカットが執行されずに口座残高が0円に戻らない場合、以下を参考にしてみてください。
各海外FX業者の執行タイミング一覧
主な海外FX業者のゼロカット執行タイミングを以下の表にまとめています。
海外FX業者 | ゼロカットが執行されるタイミング |
---|---|
GEMFOREX | 1時間以内 |
XM Trading | 追加入金時 |
AXIORY | 24時間以内 |
iFOERX | マイナス残高が発生した時点 |
Titan FX | サーバー時間で日付が変わるタイミング |
なお、海外FX大手のXMではマイナス残高発生後、いつゼロカットが執行されるかという決まりはありません。
特に何もしなくても数日後にはゼロカットが執行されているケースもあります。
ただし、海外FXですぐにゼロカットを執行して欲しい場合は、少額でも追加入金をしてみましょう。追加入金することでマイナス残高に対してゼロカットが執行されます。
この時、追加入金額でマイナス残高が補填されることはないので安心してください。
例えば、残高が-2万円になってしまった口座に1万円入金すると、入金額が口座に反映される前に-2万円に対してゼロカットが執行され、その後1万円が入金される流れになります。
注意点・デメリット
ゼロカットシステムはトレーダーにとって海外FX業者を利用するひとつの理由になるでしょう。ただし、どのようなケースにおいても海外FXでゼロカットが100%執行されるとは限りません。
海外FX業者を利用する際は、以下の3つのデメリットYA注意点があります。
- ゼロカットの悪用は禁止されている
- 業者が経営破綻すると適用されない場合も
- 悪質業者は追証を請求してくる可能性あり
ひとつずつ見ていきましょう。
悪用は禁止
海外FXのゼロカットの仕組みを利用することで、リスクを抑えて大きな利益を狙ったギャンブルトレードが可能になります。
両建て取引がその例と言えるでしょう。
例えば、2つの海外FX口座を用意し、それぞれの口座に少額の証拠金を入金します。
そして経済指標発表時などの大きなボラティリティが発生するタイミングを狙ってハイレバレッジの両建て取引をすれば、損失額を限定的に抑えて大きな利益を狙うことが可能になります。
ただし、ほとんどの海外FX業者では複数口座間および複数業者間の口座を利用した両建て取引を禁止しています。
もし、両建てを禁止している海外FX業者でこのような禁止行為をした場合、ゼロカットが執行されず、マイナス残高に対して追証が請求され、さらに口座凍結のペナルティが科せられるリスクがあるためご注意ください。
業者が経営破綻すると適用されない場合も
日本の金融庁のライセンスを得て運営されている国内FX業者の場合、たとえ業者が破産したとしても顧客の資産(口座資金)は全額保証される信託保全が義務付けられています。
一方、海外FX業者には信託保全がないため、海外FX業者が経営破綻するほどの歴史的な金融ショックが発生した場合、ゼロカットによって顧客の損失を負担することができなくなってしまいます。
実際、2015年におきたスイスフランショックによってアルパリUKという海外FX業者が経営破綻したケースがあります。
悪質業者は追証を請求してくる可能性あり
ゼロカットを導入しているにもかかわらず、追証を顧客に請求する海外FX業者があることにも注意が必要です。
2002年にアメリカで設立された海外FXのFXDDは、一時期は世界的にも知名度が高い海外FX業者として知られていました。
しかし、2015年にスイスフランショックが発生した際、急遽ゼロカットを撤廃し、追証を顧客に請求するという事件がありました。
海外FXではこのようなケースもあることは覚えておきましょう。
海外FX業者の安全性と、信頼できる業者については以下でまとめています。
海外FX業者は、国内FX業者と比較して最大レバレッジが高いことや、ボーナスが豪華であることが大きな魅力です。 しかし初めて海外FX業者を利用する人の中には、「本当に[…]
海外FX業者が導入する理由
海外FX業者はNDD方式という注文方式を採用しています。
なお、XMが採用しているSTP方式とECN方式はNDD方式をさらに細かく分類分けした注文方式となります。
NDD方式は、顧客が取引を行う度に発生する手数料が海外FX業者の利益となるため、顧客の取引量が増えるほど、海外FX業者の利益も増える仕組みになっています。
つまり、顧客の利益は取引手数料として海外FX業者の利益に還元されるため、長く取引を続けてもらったほうが海外FX業者としては都合が良いということになります。
そのため、顧客が安心して海外FXで取引を続けてもらうためにも、ゼロカットを導入して顧客の資産を守っています。
実際、ゼロカットが導入されていることで、私たちは安心して海外FXで取引を続けられる安心感を得ているのも事実でしょう。
目的は利用者に安心感を与えるため
ゼロカットが執行されるような大きな相場変動は数年に一回のペースで頻繁に起きています。
ここ数年間でも以下の大暴落が発生したことはまだ記憶に新しいでしょう。
- リーマンショック(2008年9月15日)
- スイスフランショック(2015年1月15日)
- トルコショック(2018年8月10日)
- アップルショック(2019年1月3日)
- コロナショック(2020年3月9日)
- トルコショック(2021年12月)
このような大暴落が発生した際、追証の請求に苦しむトレーダーの悲鳴が後を絶ちません。
しかし、一部の悪質な業者を除く多くの海外FX業者はゼロカットを導入しているため、上記のような数年に一度の大暴落相場でも、顧客は入金額以上の損失が発生するリスクはありません。
ゼロカットは海外FX独自のシステムであり、海外FXを利用する理由として多くのトレーダーに安心感を与えていることは間違いないでしょう。
このような背景から、ゼロカットは万が一の時のリスク回避として海外FXを利用するユーザーを獲得するマーケティング的な要素もあるかもしれませんね。
国内FX業者がゼロカットを導入しない理由
日本の金融庁のライセンスを取得して運営されている国内FX業者は、金融商品取引法に従わなければいけません。
この金融商品取引法では「顧客の損失を補填する行為」を禁止しています。
トレーダーの損失補填は法律で禁止されているから
金融商品取引法には、ゼロカットについて以下のような記述があります。
第三十八条の二 金融商品取引業者等は、その行う投資助言・代理業又は投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
二 顧客を勧誘するに際し、顧客に対して、損失の全部又は一部を補てんする旨を約束する行為(損失補塡等の禁止)
第三十九条 金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
三 有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
引用:金融商品取引法
つまり、日本の金融庁のライセンスを取得して運営されている国内FX業者は、上記の金融商品取引法によって、追証を業者が負担するゼロカットを導入することが禁止されています。
上記の理由により、国内FX業者はゼロカットを導入していません。
海外FXのゼロカットに関してよくある質問
まとめ
海外FX業者が導入しているゼロカットとは、証拠金維持率が0%を下回ってマイナス残高が発生した際の損失額を海外FX業者が全額負担するシステムです。
つまり、海外FXの顧客は入金額以上の損失を被るリスクがないため、安心して取引することができます。ただし、ゼロカットによる損失額は顧客から回収している手数料によって補填されていることは覚えておきましょう。
海外FXは国内FXと比較すると、正味の取引コスト(スプレッド+取引手数料)が10倍以上になるケースも珍しくありません。
例えば、国内FX業者の一般的なドル円平均スプレッドが0.2pipsであるのに対し、海外FX業者として人気のあるXMのマイクロ口座およびスタンダード口座のドル円平均スプレッドは2.0pipsとなっています。
このスプレッド差額分に海外FX業者の利益が含まれています。
つまり、「海外FXでは顧客が高い取引コストを支払うことによってゼロカットが実現できている」という仕組みになっています。
とはいえ、多くの海外FX業者は新規口座開設ボーナスや入金ボーナスなどによってゼロカット以外でも顧客に対して利益を還元しているので、FXをするなら海外FXがおすすめです。
このような海外FXの仕組みを理解し上手に活用することで、より効率的な取引ができるようになるかもしれません。
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